高齢者の地方移住 米国版とはどこが違う?日本版CCRCの問題点

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日本の総人口における高齢者の割合は27%
2050年には人口全体の38.8%が65歳以上という超高齢化社会を目前にしています。

少子化の影響もあり慢性的な人材不足は深刻。不足する介護士の補填に外国人介護士の受け入れも始まりました。老夫婦

介護用ロボットの開発は進むものの即戦力としての導入はなかなか厳しく、医療費の増大も含め、状況は一向に改善されていないというのが現状です。

高齢者の移住支援「日本版CCRC」
そのような状況下で、ここ数年注目されているのが高齢者移住支援(首都圏から医療・介護に余力のある地方への高齢者の移住を支援する)「日本版CCRC」です。

CCRCは1970年ごろからアメリカで急増した高齢者コミュニティで、シニアライフを豊かに過ごすための理想的な共同体といわれています。

日本でもアメリカの成功事例を参考に、国が主導となって「日本版CCRC」という形の「高齢者の集住化」「地方への移住(住み替え)」を推進しています。

では、高齢者の地方移住を促す「日本版CCRC」とはどういったもので、そこではどのような生活が送れるのでしょうか。

介護施設との違いも気になるところです。

今回は、成功例として取り上げられている「米国版CCRC」とはどのようなものか、また「日本版CCRC」との違い、問題点も含めてご紹介したいと思います。

まずは米国版CCRCの成功事例を見てみましょう。

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「アメリカ版CCRC」とは

ccrc
CCRCとはContinuing Care Retirement Community(コンティニューイング ケアー リタイアメント コミュニティ)の略で、アメリカで普及している高齢者コミュニティ(高齢者の街)のこと

リタイア後、まだまだ余力のある健康なうちに入居し、介護が必要な状態になっても転居することなく、最後まで同じ場所でシニアライフを過ごせるという「終の棲家」的な住居施設です。

施設の特徴

生活に必要な商業施設やカフェ、レストラン、スポーツ施設(フィットネス・ジム・プール・ゴルフ場・ボーリング場)、娯楽施設(映画館・ダンス・音楽・ビリヤード場)、生涯学習施設(図書館・習い事教室)・美容院などが整えられ、健康指導、要介護にさせないための予防医療、認知症になった時のヘルスケアサポートなどが、多面的に整えられたコミュニティ(共同体)になっているのが大きな特徴です。

日本の老人ホームのように1つの建物の中で完結する施設ではなく、その規模に圧倒的な違いがあります。

敷地が広大なため、移動はゴルフカートなどを使用しているところもあります。

ゴルフカート

月額に支払う利用料金には、賃料のほかに定期的なハウスキーピングとリネン交換代、一定額の食事クレジットなどが含まれているのが一般的なスタイルです。

機能回復的なアクティビティというより、趣味や文化的行事など社交的なアクティビティが豊富である点が米国版ccrcの大きな特徴でしょう。

最近では大規模なものだけでなく、中規模のもの、小規模のものなど、多彩になってきています。

理念

高齢者を対象としたコミュニティとはいえ、アメリカでは自主・自立を尊重する文化があるので、日本の介護施設のようなサービスの提供を受けるという考え方とはちょっと違います。

食事を例にとると
夕食時間に食堂でサービスを受ける日本の介護施設と違い、毎月一定額のクレジットの中からカフェやレストランなど「自分で自由に選んだ場所で好きなものを注文する」というようなスタイルです。

クレジット分が不足してきたら、もちろん追加チャージもできます。

レストラン

入居にしても、受けるサービスにしても、自分で選択するという考え方が根底にあり、個人の意思を尊重した生活が基本となります。

CCRCの歴史

1970年ごろから急増し、現在全米に2000ヶ所ほどあるCCRCには60万人ほどの高齢者が生活しています。

住民同士の交流も盛んで、老後を理想的に過ごせる高齢者施設ではありますが規模が大きな分 投資額も大きく、入居できるのは資金面をクリアした人のみです。

ほとんどが富裕層を対象とした施設となっており、入居には多額の資金が必要です。そのため米国の高齢者の3%しか入居できていない、という現実があります。

アメリカは競争社会なので、人生を勝ち抜いてきた人たちが、最後の最後まで勝ち抜くための場所、まとめると「人生の終わりまでを豊かに暮らすための高齢者の共同体」が米国版CCRCといってもよいでしょう。

「日本版CCRC」構想について

「日本版CCRC」構想とは
(日本版CCRC構想が目指すもの)
構想は、「東京圏をはじめとする高齢者が、自らの希望に応じて
地方に移り住み、地域社会において健康でアクティブな生活を送るとともに、医療
介護が必要な時には継続的なケアを受けることができるような地域づくり」を目指
すものである。
(https://www.kantei.go.jp/より引用 )

2015年5月、官邸主導のまち・ひと・しごと創生本部事務局は「日本版CCRC構想有識者会議」で素案を正式に発表しました。

米国で普及しているCCRCを参考に、高齢者の地方移住を促進し、地方創生につなげることを目指す「日本版CCRC」です。

医療・介護に余力があり、過疎地域でないなどの一定以上の生活機能を満たす地域としては、函館市・秋田市・岡山市・北九州市などの都市部を含めた全国各地41ヵ所が選定され、すでに産声を上げている「日本版CCRC」もあります。

団塊の世代が後期高齢者となる2025年には、都市部での「介護人材の不足」や、
約13万人分の「高齢者受け入れ施設の不足」が予想されています。

高齢者の地方移住が成功すれば、介護施設付属の問題が解決されるだけでなく、地方に雇用が生まれ、地方の活性化も見込めるとの期待があります。

「米国版CCRC」と「日本版CCRC」の違いとは

高齢者と家

米国版と日本版のCCRCには、一見するだけでも大きな違いがあります。

アメリカのCCRCは富裕層向けの民間事業。規模も違えば入居費用、月額費用、そして入居対象者自身の経済的な条件も日本版との間には開きがあります。

詳しく見ていきましょう。

入居対象としている層の違い

アメリカのCCRCは富裕層を対象としているので入居費用も数千万、そして毎月数十万という利用料を支払える層が対象となっています。

一方日本版CCRCは、主に高齢者夫婦の厚生年金の標準的な年金月額で生活できるような水準を想定しています。

厚生年金の標準受給額は 約21万8千円。
いわゆる「普通の人たち」が移住の対象となっているわけです。

この部分だけを見ても、米国版のような至れり尽くせりの豪華なコミュニティとは、違ったものになりそうです。

移住には大きな決断と、それなりの費用が必要。そのため家を処分して移住費用を捻出しなければならないといったケースも想像されます。

そこまでして移住するニーズが、一体どのくらいあるのでしょうか…。

保険制度の違い

ご存知のようにアメリカと日本では保険制度が全く違います。

日本は国民皆保険制度(こくみんかいほけんせいど)ですが、アメリカでは健康保険への加入義務はなく、公的な健康保険、または民間の保険会社が提供する健康保険へ、個人の意思で加入します。

そのような背景から、アメリカでは「自分の身は自分で守る」という意識が強く、高額な保険料を支払い、保険契約を結べる人たちのみが手厚い医療や介護が約束されたCCRCへ入居することができるのです。

日本のように
・介護の人材不足を補うため
・高齢者を動かすことで社会保障の費用を少しでも削減したい
…という考え方とは、出発点からして根本的な違いがあります。

コミュニティとしての違い

アメリカのCCRCが閉鎖的(ゲーテッド・コミュニティ)と言われているのに対し、日本版CCRCは地域とのつながりを重視したオープン型コミュニティとなっています。

もともとその地域にある介護や医療、各種生活サービス、さらには就労も含めて地域と関わり合いながら暮らすというスタイルです。

…と言えば聞こえは良いのですが、施設や規模によっては、「単なる地方への移住」になってしまいます。

移住することが目的なのではなく、「住み替えた場所に住み続けたい」「この人たちと暮らしたい」と思えるようなコミュニティを作り出せるかどうか…この部分の開きが成功例になるか、失敗例になるかの分かれ目になってくるでしょう。

「日本版CCRC」の現状

笑顔シニア女性成功すれば、介護施設の不足問題などが一気に解決される可能性のある日本版CCRCですが、まだまだ新しいシステムということもあり、モデルケースやノウハウが確立されていないというのが現状です。

移住先での介護は、その地域の介護施設を利用することになるので、受け入れ先が人手不足の場合は希望通りのサービスが受けられない可能性もあります。

アメリカ版のように契約ではなく、移住先の地域サービスに頼ることになるため、地域によっては確実にサービスが受けられるという保証はないともいえるのが現状なのです。

CCRC成功例
『スマートコミュニティ稲毛』

スマートコミュニティ稲毛
http://www.smartcommunity.co.jp/

スマートコミュニティ稲毛は日本最大のCCRCです。
7割が東京などからの移住者で、52歳から90歳までの約600人が暮らしています。

初期費用1人の場合2人の場合
入会金150万円200万円
施設利用権利金140万円280万円
月額費用1人の場合2人の場合
食費(朝・夕)42858円76192円
コミュニティサービス費41905円83810円

(※消費税抜き・2018年現在の料金です)

月々の施設利用費は、年金の範囲内で生活ができるように設定されています。
スマートコミュニティ稲毛全体で食費や教養娯楽費などの生活費を共有することで、
一人ひとりの負担が軽くなるよう考えられています。

徒歩圏内に「イオンタウン稲毛」「トライアル(ディスカウンター)」「レストランビュッフェ」などがあり、地域を代表する総合病院、公共施設や金融機関へのアクセスも便利な立地です。

CCRC失敗例

※最初にお断りしますが、失敗例としたのは、施設に問題があったわけではなく、あくまでも入居希望者が当初の計画より大幅に下回り、予定通りの施設運営になっていないという意味で失敗例と位置付けています。(ご容赦ください)

20年前、福岡県朝倉郡に全国に先駆けて開発されたCCRC・美奈宜の杜は、総事業費300億円で、戸建て住宅、ゴルフ場、コミュニティセンターなどを作る計画でした。

見込んでいた入居者は1000人、実際に集まったのは200人。

その結果開発業者の経営が悪化し、当初予定していた住民が交流するための多目的ホールやフィットネスクラブなど、老後を生き生きと過ごすための施設の建設は建設中止となりました。

さらに追い打ちをかけたのが介護問題です。
介護を必要とする住人が増え、ヘルパーが不足し、十分なサービスが受けられないという事態に直面しました。

結局、街を去る人まで現れるという人も現れました。

「日本版CCRC」構想の課題・問題点

高齢者が地方に移住することで、雇用が生まれ、町が活性化し、地方創生につながる…構想だけ聞けば、素晴らしいアイデアのように思えます。

しかし内閣府が行った「東京在住者を対象とした意識調査」を見ると、実際には地方への移住を望む高齢者は、それほど多くないことがわかっています。

移住に関する意識調査
特に女性は住み慣れた地域に友人も多く、便利な都会からわざわざ地方に移住する意義を、あまり感じていないのです。

さらには介護にしても、アメリカでは確実にサービスを提供してもらえる「契約」なのに対し、日本では既存の介護保険を使っているため、要介護者が増えて人材不足になれば、十分なサービスが受けられない可能性もあります。

結局のところ、首都圏から地方へ高齢者を移住させて数字のバランスを取るのではなく、実際に移住する高齢者の気持ちや介護の実情をふくめた取り組みが課題と言えます。

日本版CCRC構想を成功に導くには、高齢者だけでなく多世代が住みたいと思う魅力的な街づくりが大きな鍵となってくるでしょう。

個人的な意見になりますが
日本版CCRCは、根幹となる部分には触れず、表面的によく見える部分、都合の良い部分だけをクローズアップして移住を進めているところに違和感を感じています。

この部分の不安が解消されれば、移住への意識に変化が生まれるかもしれません。

介護施設と日本版CCRCとの違い

介護施設と日本版CCRC、どちらも高齢者を対象としたものですが、どのような違いがあるのでしょうか。

介護施設
介護施設・老人ホームは、自立した生活が難しくなり、介護が必要となった場合でも高齢者が暮らしやすく配慮された住まいです。

食事、介護(入浴・排泄・食事など)、洗濯・掃除などの家事援助が受けられ、介護職員が常駐しています。
有料老人ホームとは

日本版CCRC
元気なうちに入居し、介護が必要になれば介護保険を使って、個々に契約したデイサービスや訪問介護などの高齢者サービスを利用することになります。

施設を作る際、介護サービス事業所等の設置などの体制は作っており、重介護になった場合もそれで対応することを想定しています。

有料老人ホームや介護施設とは違い、ヘルパーや介護職員は常駐していません。

CCRCと介護施設の違いは…
CCRCと老人ホームとの大きな違いは、入居時の状況です。
CCRCは健康な状態で、セカンドライフを楽しむために入居し、介護施設は自立した生活が難しくなった状態で入居するところに大きな違いがあります。

また、CCRCは健康を維持するための充実した生活を目指し、介護リスクを減らす取り組みもあります。

介護を受けるために入居する介護施設と、健康を維持しセカンドライフを謳歌するために入居する…入居の動機や施設のつくりそのものにも違いがあります。

まとめ

高齢者の地方移住CCRCについて、どのようなものか、成功例、失敗例、問題点も含めてみてきました。

いかがでしたか?

米国版CCRCと日本で推進されているCCRCとは、対象としている層、保険制度、そして考え方の出発点自体にも違いがあることがお分かりいただけたと思います。

CCRC構想の意義として

「地方移住を望む高齢者の希望の実現」
「地方への人の流れの推進」
「東京圏の高齢化問題への対応」

の3つがあげられていますが、構想の実現はなかなか厳しいものが感じられます。

団塊の世代が超高齢化を迎えつつある今、多世代が共生し、互いに支え合える地域づくりをどのように行っていけばいいのか、また解決しなければならない問題にどう取り組んでいくのか、課題は山積しています。

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